「櫛は“苦・死”につながるから、贈ってはいけない」と聞くことがあります。この連想は実際に知られていますが、櫛の語源が「苦」と「死」からできた、という意味ではありません。辞書では「櫛」は「串」と同語源とされ、「苦・死」は後から結びついた語呂合わせ、俗信として説明されています。

つまり、由来のある注意点ではあっても、すべての相手が必ず嫌がる全国共通の禁止事項ではありません。相手が櫛を欲しがっているか、語呂を気にするかで判断するのが現実的です。

「苦・死」は語源ではなく、語呂合わせ

櫛(くし)の音を「苦(く)」と「死(し)」に分け、不吉だと考える俗信があります。さらに、櫛の歯が欠けることや、古くから櫛が別れや厄落としの場面に登場したことも、贈答で慎重に扱われる背景になったと説明されています。

一方、櫛は古くから髪を整える実用品であり、髪飾り、婚姻の象徴、魔よけの道具として扱われた歴史もあります。江戸時代には求婚の品として贈られた例も紹介されており、「櫛=常に悪い贈り物」と一つの意味に固定することはできません。

前向きな意味づけはあるが、禁忌が消えた証明ではない

近年の贈答記事や販売ページでは、髪のもつれを「解きほぐす」道具として、人間関係のもつれも解くという前向きな説明を見かけます。これは贈る理由にはなりますが、社会全体で古い連想が消えたことを示す調査ではありません。

反対に、昔からの語呂を知っているからといって、相手が必ず気にするとも限りません。販売側の新しい物語と、古い俗信のどちらかを絶対の正解にせず、受け取る本人の考えを優先する必要があります。

相手が欲しいと言っているなら、具体的な希望を優先する

相手がブランドや素材、形まで指定して「この櫛が欲しい」と言っているなら、語呂だけを理由に候補から外す必要はないでしょう。毎日使う物だからこそ、髪質や用途に合うかを確認し、本人が選んだ物を贈るほうが失敗しにくくなります。

一方、初めて贈り物をする相手、目上の人、縁起を大切にする家庭など、受け止め方がわからない場合は、あえて櫛を選ばなくてもかまいません。「実は良い意味もある」と説明して納得してもらうより、最初から別の候補にするほうが、相手に余計な判断をさせずに済みます。

判断は二つで十分

  1. 相手が具体的に欲しがっている、または愛用品の好みがわかっているなら、希望を優先する。
  2. 相手の考え方がわからず、櫛でなければならない理由もないなら、別の品を選ぶ。

この二つに分ければ、「絶対に贈ってはいけないのか」を延々と悩む必要はありません。

まとめ

櫛と「苦・死」の結びつきは、櫛の語源ではなく、後から広まった語呂合わせと俗信です。古い連想は今も知られていますが、櫛には婚姻の象徴や実用品としての別の歴史もあります。相手が欲しいと言っているなら希望を優先し、考え方がわからないなら無理に選ばない。それが最も負担の少ない判断です。